今回は、前回に続き「さようなら」「さよなら」について考えてみましょう。
会話例A、B、Cのうちで、実際に使わないものは…
実は、全部です! AもBもCも、実際に聞くことのない「へんな会話」なんです。なぜ??
私の考えでは、「さようなら」が「別れ」のイメージがとても強い言葉だからだと思います。そのことが、ABCそれぞれの会話を「へんな会話」にしていると考えられます。
それでは一つずつ見ていきましょう。
A…店で客と店員が話しています。客は今お金を払い終わりました。
店員:「ありがとうございました。さようなら。」
客:「さよなら。」
実際には、下のように言います。
店員:「ありがとうございました。またおこしください。」
客:「… 」(ふつうは何も言いません)
もし、店員がお客さんに「さようなら」と言ったら、まるでお客さんがその店にもう来ないような感じがします。それはだめですよね。
ですから、「またおこしください。」といいます。「おこしください。」は「来てください」の敬語です。このあいさつに対して、客が「…」(何も言わない)のはひどいと思う人は、
を見てくださいね。
B…学校で授業が終わりました。
先生:「今日は終わりです。では、みなさんさようなら。」
学生:「先生、さようなら。」
このように言うのは、幼稚園か小学校です。「学生」つまり、大学生など、大人の学校では、このあいさつはしません。
大学の講義のような人数が多い授業では「 」のことばは何も言いません。
小さい人数でする授業や仕事などの場合は、「お疲れ様でした。」や「ありがとうございました。」と言います。そして、「お先に失礼します。」と言って部屋を出ます。
C…友達と遊びに行って、帰ってきました。
「今日は楽しかったね。」
「ほんとに楽しかったね。また行こうね。」
「うん。じゃ、さよなら。」
「さよなら。」
これも、普通は「じゃ、また。」「じゃあね。」などと言います。「では、また会いましょう。」という意味です。
もしも、デートの後で「さよなら」と言ったら、どうなるでしょうか?!危険な誤解が起きそうですね。「さよなら」は本当に彼氏・彼女と別れるときだけ使ったほうがいいです。
わたしたちは人と別れるとき、「また会いたい」「また会えるだろう」と考えますね。これが、「別れ」のイメージが強い「さようなら」を使わない理由かもしれません。
使わないのに、「さようなら」は「別れのことば」の代表として大切な言葉なんです。ふしぎですね。